ぜんしゅの跫2021-03-05

澤村伊智

「ぼぎわんが、来る」でデビュー、
比嘉姉妹と野崎が活躍シリーズの5作目となる。

この作品集には5短編が収録されている。
明確に比嘉姉妹のものとわかるのが3作品で、
「鏡」という作品は野崎が名のみ登場する。琴子らしい姿も見える。
「わたしの町のレイコさん」は比嘉姉妹及び野崎は登場しない。
「鬼の海たりければ」は野崎が名のみ登場する。
「赤い学生服の女子」は比嘉美晴が登場する。
そして「ぜんしゅの跫」は比嘉姉妹と野崎が登場する。

いづれも小品で、「ぜんしゅの跫」を除き比嘉姉妹に比重はない。
「ぜんしゅの跫は100ページ近くの中編ともいえるもので、
怪異の始まりから解決まで、とてもうまくまとめられていると思う。
他の作品が、やや中途な感じでまとめられていることからすると、
この人は長いほうが、より力が発揮できる作家なのでと感じる。

怖さの質でいうと白日夢の恐ろしさ「鏡」。
サイコサスペンス的な「わたしの町のレイコさん」。
一人が足りの狂気がこわい「鬼の海たりければ」
あの世とこの世の境界が目まぐるしく入れ替わる「赤い学生服の女子」
どれも夢の中を、悪夢の中をさすらう。

「ぜんしゅの跫」は、「ぼぎわん」の続編として正しいものとなっている。
今回の化け物も相当に恐ろしいぞ。
相変わらず化け物の行動には善悪がない。
あるのは荒ぶる理由だけである。

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