ダミアン物語2005-09-05

副題は「神様を信じた犬」
主人公は後に「ダミアン」と命名される若いピットブル。
人に飼われていず、森でたくましく生きている。
野生状態で犬がどう生きるかを研究する学者と出会い、
人間に興味を示し、学者の苦境を救うこととなる。
しかし、その学者によって発信機を取り付けられ、
そのため行動に制限を受け、生きる術を失う。
万策尽きた犬は学者に救いを求め接近を試みるが、
研究のためと称して、見捨てられる。
そして岩場で発信機が引っかかり餓死寸前となるのだった。

瀕死の犬は学者の信念に反する行為によって一命をとりとめ
大学に引き取られる。しかし、犬は学者に心を許すことはなかった。
そして犬にとって運命の人・エリザベスと出会う。
エリザベスと「ダミアン」とのこころのふれあいは美しい。
だが、「ダミアン」には過酷な運命が待っていた。
泣ける作品だ。

とはいうものの、「ダミアン」の気高さはともかくとして、
エリザベスが正しいとは思えない。
悪役としてセヴィルという野心に溢れ、
倫理観を失した動物実験を行う男が登場するが
その悪に対してエリザベスがとる手段を見れば
登場する人間たちの行為はすべて独りよがりで滑稽でしかない。
この物語で人として救いを見出せるのは
バーバラという作者を投影させた女性と
セヴィルの助手・トムだけでしかない。
ハッピーには終わらないこの作品で
エリザベスが命を落とすこととなるのは
作者が用意した救済である。そう読んだ。

動物実験、研究手法などに対する批判と
作者の犬に対する造詣の深さに瞠目させられる。

9点