犬はどこだ2005-09-15

米澤穂信の作品。東京創元社『ミステリ・フロンティア』の一冊。
なかなかに面白いミステリだった。
手法的に斬新でもなく
超人的で魅力的な探偵というわけでもない。

堅実な人生を望んでいたのに、
都会から拒絶される体質ゆえ脱落せざるを得なかった
くたびれきった紺屋長一郎が主人公。
脇役には、人に使われるのも使うのもいやで
フリーター生活をしながらも探偵というのにあこがれる
紺屋の高校の後輩・半田平吉が配される。

『犬探し』専門の調査事務所を設立したはずなのに、
舞い込んだ依頼は、失踪人捜索と古文書解読。
地方都市で受けた依頼は望むものではなかったが、
しぶしぶ依頼を引き受ける。
押しかけ所員に古文書の調査は任せ、
紺屋は失踪人調査を担当する。
まったく別の依頼だと思えたが、
微妙に二つの調査は交錯していく。

読者には二つの調査が交錯していくさまは見えているが
作中人物たちには見えていない。
進行に伴って、ははーん分かったぞ、と思わせるが
最後の最後でもう一段のひねりが用意されている。
今後の紺屋S&Rの活躍が期待される。

8点