『逃避行』 ― 2005-10-10
篠田節子著 光文社 2003刊
飼い犬が隣家の子どもを噛み殺してしまった。塀を乗り越え子どもは犬にいたずらし、注意してもやめることもなく、次第にいたずらをエスカレートさせていた。その日、塀を乗り越え爆竹を犬に投げつけ、興奮した犬が子どもを組み敷き首を噛んでしまったのだ。
平凡な主婦・妙子は、女性特有の持病に苦しんでいたが家族から理解されず、愛犬を心のよりどころにしていた。夫は相談もせずさまざまな事を決め、子どもたちは妙子を煩わしいものとして扱っていた。そんななか事件が起こったのである。マスコミは昼夜分かたず取材に来、報道は一方的に悪者に仕立てる。家族は愛犬を殺処分しようとする。追い詰められた妙子は我が子とも言うべき愛犬を連れ逃避行に出る。
犬を飼ったことがあるなら、妙子の行動に共感するのではないだろうか。この二人の逃避行が幸せに終わることを期待して読み進めるかもしれません。しかし、この逃避行に妙子の救いはない。穏健とされるレトリーバー種であっても、犬には野生がある。人の思い入れなど超えたところに行き着くこともある。そうしたすべてを越えてつかの間の安寧が訪れたとき皮肉な運命が妙子を襲う。
報道のあり方や、家族のありようを強烈に風刺している『逃避行』は、犬好きにはもちろん、すべての人に考えて欲しい事柄が含まれています。
7点
飼い犬が隣家の子どもを噛み殺してしまった。塀を乗り越え子どもは犬にいたずらし、注意してもやめることもなく、次第にいたずらをエスカレートさせていた。その日、塀を乗り越え爆竹を犬に投げつけ、興奮した犬が子どもを組み敷き首を噛んでしまったのだ。
平凡な主婦・妙子は、女性特有の持病に苦しんでいたが家族から理解されず、愛犬を心のよりどころにしていた。夫は相談もせずさまざまな事を決め、子どもたちは妙子を煩わしいものとして扱っていた。そんななか事件が起こったのである。マスコミは昼夜分かたず取材に来、報道は一方的に悪者に仕立てる。家族は愛犬を殺処分しようとする。追い詰められた妙子は我が子とも言うべき愛犬を連れ逃避行に出る。
犬を飼ったことがあるなら、妙子の行動に共感するのではないだろうか。この二人の逃避行が幸せに終わることを期待して読み進めるかもしれません。しかし、この逃避行に妙子の救いはない。穏健とされるレトリーバー種であっても、犬には野生がある。人の思い入れなど超えたところに行き着くこともある。そうしたすべてを越えてつかの間の安寧が訪れたとき皮肉な運命が妙子を襲う。
報道のあり方や、家族のありようを強烈に風刺している『逃避行』は、犬好きにはもちろん、すべての人に考えて欲しい事柄が含まれています。
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