忘れ雪2005-10-10

新堂冬樹の2-3年前発表の作品
文庫化されたので、レビューを再掲

春に降る雪を「忘れ雪」という。とても儚いけれど美しい印象を持たせる言葉だ。
紹介する作品はそのイメージどおりの美しく儚い物語である。

積もることなく儚く消えていく忘れ雪に願い事をすれば必ず叶う。

両親を一度に事故で失い叔父夫婦に引き取られた少女は、そのガラスの心を隠して生きていた。決して人に心のうちを見せないよう心に鎧を着込ませて。孤独と初春の寒さに公園で震える少女は傷ついた子犬を見つける。弱った子犬に自分を見た少女は、おりしも降ってきた忘れ雪に「この子を助けて」と祈った。忘れ雪が融けるまでに願いを終えた少女は、獣医を目指す青年に助けられた。少女は青年のあたたかさによって孤独を溶かされ、青年に淡い恋心を抱く。だが、少女の悲しい運命は、叔父夫婦の破産により、青年との別れを迫った。別れを迎えて少女は青年と約束する。7年後この場所で会いましょう。そして少女はクロスと名づけた子犬とともに別な親族の下へと行くのだった。(表紙の子犬がその犬なのだけれど、このイメージがよい。)
8年後、クロスと名づけられたあのときの子犬に導かれ二人は再会する。美しく成長した少女は青年を求めつづけていた。しかし、青年には少女の記憶は戻らないままだった。惹かれあいながらも届かない。そして彼が少女の記憶を取り戻したとき、彼女は日本を離れていた。一年後に再会しましょうと言うメモを残して。
一年後帰国した彼女は突然に姿を消す。婚約者の死への疑念をもたれながら。

超一流メロドラマ復活宣言   泣ける!
 ピュア・ラブストーリー(純愛小説)がここに蘇る。

犬好きには感涙もの。二人の行方は幼い片思いから、再会と失念。意地と当惑。すれ違い物語りから、殺人事件あり、バイオレンスあり。
結末が『純愛』を売り物にしつつも、安易に幸せ物語にさせていない。新堂節も健在。

7点

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