ぬしさまへ2006-03-02

畠中恵 新潮文庫 476円(本体)

「しゃばけ」シリーズ第2作。
「しゃばけ」が長編だったのに対して、
こちらは短編集。表題作他全6編が収められている。
「しゃばけ」シリーズには、様々な妖怪が登場するが、
それらが人間臭い。
主人公・一太郎のおつきの手代、仁吉と佐助は
それぞれ白沢・犬神という大妖ということだが、
なかなかそれらしいところは見せない。
むしろ、前作で祖母・ぎんが、実は齢三千年という大妖ということもあり、
一太郎のほうが、よほど怪しい光彩を放っている。
妖力らしいものこそ持たないが、人ならぬものを見ることができ、
それらと会話でき、且つ助力を得られるというあたり
既に人であることを越えているといえるように思う。
病弱で、一人では何もできないと本人が自覚しているが、
有り余る知恵で、怪事件を解決に導くあたりは、
鬼太郎といい勝負と思うのだ。

本作品集では、「仁吉の思い人」で祖母・ぎんの過去が語られる。
手代の仁吉が一太郎に寄せる思いの訳も語られている。
そこにも、ここにも人情が溢れているのである。
よほど妖怪のほうが人情味に溢れていると思えてしまうのは
作者の江戸時代への憧憬がなせるところか。
現代に妖怪たちの人情が照射している。

7点

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