専務の犬2008-01-31

高橋留美子   小学館   1048円

1999年に発行された大判コミック。
例によって古本で仕入れてきた。85円で買えたので、損はない。

「うる星やつら」でブレイクし、「らんま1/2」から「犬夜叉」と、
少年サンデーを中心に活躍している高橋氏の、
ビッグコミックオリジナルに発表した小品集となる。 

高橋氏は、サンデー誌上においてはあだち充と並ぶ看板作家である。
ラブコメディーを得意とし、その意味でもよきライバルとも言える。
ただ、「犬夜叉」については連載12年目にはいるが、
物語が冗長になってきている点と、
連載初期に見られた軽快さが失われていると感じている。
前2作に比べると、重くなってきていて、不満に感じている。

少年雑誌のみならず、青年誌でも「メゾン一刻」に「一ポンドの福音」と、
ヒット作品を生み出している。
少年誌ののりとは異なりしっとりと落ち着いた物語の中に、
ギャグの要素を交えており、恋愛コメディーとして優れたものとなっている。
結構脇役陣にユニークな人物設定をしているので、
脇役をメインにして物語を書いたら面白かろうと思ったものだ。

そういう意味では、本作品集は楽しい。
1994年から1998年に掲載された6作品は、
高橋作品をにぎやかに彩った過去の脇役に似た登場人物が、
勘違いをしたまま、どたばた劇を繰り返していく。
現実の世界で起きれば、はた迷惑などたばたなのに、
高橋氏の筆にかかれば、にやりと笑えるアジになる。

表題作の「専務の犬」は、明暗を分けている同期の専務に、
愛人の犬を押し付けられる冴えないサラリーマンが主人公だ。
ゴールデンらしき犬を押し付けられたと思ったら、
その犬からも無視される。
次は当の愛人を押し付けられる。
困っていたら、愛人が案外気さくな女性で、
いつの間にか家族後と彼女のペースに飲み込まれてしまう。
いつまで続くのかと思っていたら専務の妻に愛人の存在を突き止められ、
専務は窮地に立つ。
そのとき愛人は俺のものと宣言し、その機転によって愁嘆場が回避される。
家を守るためにとった行動だといったとき、犬に懐かれる。
その前後に巧にスケベ心などを加えている。

そのほかも似たり寄ったり。
作品の質としては情緒もあり、好感が持てる。
高橋氏が一番輝いていたころの作品だけのことはある。

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