『はいら』が登った。2010-07-29

『ごお』に始まる、ぼくの歴代ワンコは、
公園の滑り台の階段を難なく登っていた。
8歳できたジョンでも、最初は恐々だりったけれど、
『そらん』を見ていて登るようになった。
できれば登りたくないようではあったけれど、
ぼくと『そらん』がじゃれていると、必死で登ってきた。

そんな歴代ワンコたちと違い、
『はいら』は徹底した怖がりというのか、
ドギパのアジリティー用具であそぼと誘っても、
シーソーはもちろんのこと、ドッグウォークも駄目、
Aランプも駄目、まっすぐのトンネルでさえくぐれない。
ハードルを一番低く設定しても飛び越せない。

いつもの訓練所でも、『そらん』がはしごで屋根に登っていても、
タイヤで作られた不安定な足場で遊んでいても、
どうしていいのかわからないで、周りをうろついているだけ。

ところが先だっての訓練日に、
久しぶりに『そらん』の捜索を見に行ったとき、
一通り訓練が終わったあと、犬たちの目線を確かめておこうと、
屋根に登るよう設置された梯子を上って、
屋根の上にいたら、『そらん』が横にやってきて甘えだした。
それを眺めていた『はいら』がぼくのところに来たくて<
はしごに手をかけたり、背伸びをしたりしている。
登るのは怖いらしくヒンヒンとないている。

ヒンヒンな鼻を鳴らしていないで「おいで」と声をかけてやると、
異を決して、必死の形相で梯子を登りだした。
が、梯子途中で、手も足もどう動かすのやらわからず、固まった、
『そらん』は固まっている『はいら』の横をすり抜けて
梯子を登っては降りを繰り返す。
もしかしたら手本を示していたのかな。
とにかく数分固まったまま途方にくれていた『はいら』が、
スマートさには程遠い形でも、ゆっくりと上がりだした。
ぼくが上から、訓練士さんが下から励ましていると、
恐々でも登頂にこぎつけたのだ。

思い切り褒めてやると嬉しそうな顔をする。
じゃ、降りようかというと、へっぴり腰だけれど、
登るときよりはスムースに降りた。
下で、また褒められると、顔が違う。表情が自信に満ちている。
そのまま一人で嬉しそうに梯子を登り出した。

3歳にして、初めての梯子のぼり。
『はいら』の能力がひとつ開花した。

そのあとタイヤで作った足場にも初挑戦していた。
それも上手に行き来できるようになったので褒めてやると、
ほんまに嬉しそうにしていた。

怖がりだからと純粋な家庭犬になるしかないと決め付けてしまうには、
この日の動きを見て、早すぎたのかもしれないなと思っています。

でも、僕は犬に有能を望んでいるわけではないから、
これからもぼんやりした犬でいさせようと思っています。

トム・ウェイツ2010-07-31

「酔いどれ詩人」なんてフレーズが懐かしい。

大塚まさじや友部正人らが惹かれたトム・ウェイツ。
初めて聞いたのは『異国の出来事』だった。
ジャズ色の強い、ストリングスまで使った意欲作だった。
発表は1975年だけれど、
もう少しあとで聞いたような気がする。
1978年くらいだったかな。

しわがれ声で、語るように歌う。

多作家ではないし、爆発的に売れたわけでもない。
でも玄人受けしているのか、カバーされることも多い。
どのアルバムでも一流のミュージシャンがサポートしている。
ジャズ界ではビッグ・ネームたちが、さりげなくクレジットされている。
とてもしゃれた小粋な音世界なのだ。

MP3化するために、1973年のデビュー作『クローシングタイム』から、
1976年発表の『スモール・チェンジ』まで続けて聞いているけれど、
この初期のころの世界は、たまらない。

ピアノを主体にして、ストリングを被せ、
アメリカ古謡の雰囲気も醸し出している。
打ち込みリズムが主流の今だからこそ、やすらぎの音作りが心地よい。

今だからこそ聞いてみても良いんじゃないか。

トム・ウェイツの音作りに関してはロック色が強まって行く80年代より、
このアコースティックな70年代のほうが、個人的には好きだ。
世評は『ミュール・バリエーション』あたりのほうが高いようだけれどね。