8月の走行距離2011-09-01

8月は2613キロ。
犬たちは約2100キロの移動。

8月末の八ヶ岳行が増えた理由。

相変わらずトータル燃費は10キロ程度出る。
この図体ではなかなかの成績と思う。

今度ハイブリッドが出るようだが、
おそらく実燃費14キロ程度の成績にとどまると思われる。
ガソリン車としてこの成績なら、
普通の乗り手ならハイブリッドはいらないように思う。

僕の場合は年間2万キロ以上は乗るので、
途中のバッテリー交換などを含めたとしても、
経済性では魅力的なものと思う。

一年早く出ていたならと考えなくもない。
今は貯金もないから考えることはないが。

さんざんの八ヶ岳行2011-09-02

行きたいと思っていたが、、要所要所で行事が入り、
いけないままに月末になってしまった。
最初は、8月の22日ごろと思っていたけれど、
全国的に天気が悪い日が予想されていたので、
8月27日の出発で予約した。

27日の夜に出発。
28日から3泊。9月1日の1時に帰阪予定だ。
3泊6日という表記ができよう。

で、何が散々だったかといえば、雨と事故渋滞だ。

往路は黒丸PAまではしぶしぶだったけれど、
岐阜に入るころから本格的に降り始め、
中央道に入ったころには前方が見えにくいほどの雨となった。
あまりにも疲れるので虎渓山PAで休憩。仮眠。
黒丸では犬たちと散歩したが
虎渓山では車から出ることさえできなかった。

1時間ほど仮眠してから、まだ激しい雨の中を再出発、
だんだんと明るくなってくるころに恵那トンネルを通過、
駒ケ岳付近まで来たころに雨がやむ。
6時30分ごろ諏訪湖SA着。ここで犬とボクの朝食。
7時30分ごろ移動再開。
スパティオ小淵沢で時間調整してから、
犬の牧場に9時30分ごろ到着。

幸い雨は止んでいたものの、あっちもこっちもドロドロ。
それでもランは草があるから遊べた。
でも、2時30分ごろから雨が降り出し、
3時には激しい雨となってしまった。
あきらめて宿舎へ向かう。

二日目は川遊びを予定していた。
ところが連日の雨の影響で川は増水している。
流れも速く、濁水流になっている。
ライジャケも持っていたが、この流れでは無理。
強行して遊ばせれば危険だ。
そんなわけで再度牧場に行く。
ところが川を見せたものだから、
牧場ではつまらないとのたまう。
で、昼過ぎに切り上げて河岸を変える。
お茶犬をしに行く。

3日目に川の様子を確認すると、
前日より水量は減っている。
流れもやや緩やかになり、透明度も出てきている。
何とか3時間川遊びができた。
13時過ぎにいったん宿舎に戻り、
清水で体を流す。
バスローブを着せて牧場に行く。
八ヶ岳の山並みをバックに写真を撮りたかった。
でも結局稜線は見えずじまい。

4日目は東京を回るつもりだった。
アイバロで「はいら」の衣料を買い求めるのと、
古い犬友の写真を届けるつもりだった。
大体14時に到着すれば、二つの予定をこなせるはずだた。
で、11時までを滝沢牧場でゆっくりとし、
中央高速経由で東京を目指した。
ところがだ、三鷹料金所で起きた事故のため、
予定より90分も遅れてしまった。
そのため犬友のところにいくのがやっとで、
アイバロには寄れず。

大体の帰阪予定を1時に設定していたから、
犬友のところを5時に辞し、東名高速に向かう。
東名高速の手前で事故情報あり。
厚木付近で事故渋滞2キロ。日本坂トンネルでも事故とある。
何のことはない厚木付近の渋滞列はどんどん伸びて実際は5キロ。
抜けるのに40分以上もかかってしまった。
渋滞につかまっているうちに日本坂の事故情報で死者が出たと聞く。
足柄に6時30分に着く予定が狂う。
大井松田あたりからは雨が強くなり、
神奈川に入ったら前が見えないほどの雨になる。
足柄でも雨は強いが、
すでに5時間以上車で犬たちは待機をしている。
人犬ともレインコートを着て散歩する。
雨足が強いからドッグランは使用できず。
給水等済ませて、日本坂トンネルの事故処理に不安を感じつつ、
再び移動開始。
裾野から富士の間は時折激しい雨で水煙で前がみづらい。
当然50キロ規制がかかっている。
渋滞は本格化していて12キロになっている。
3車線のうち1車線での通行となっている。
結局、本来なら2時間で通過できるところが、
足柄で休憩したといっても4時間30分。
浜名湖SAに着いたのは10時50分。
2時間の遅れのおかげで、
家に着くまで運転し続ける体力もないと知る。
家まであと一時間まで来た伊賀で限界。
仮眠して3時50分に家にたどり着いた。

雨と事故渋滞で疲れ切った八ヶ岳行となった。

ゴメンナサイ2011-09-09

日高由香    双葉文庫    619円(別)

帯には「日本中を震撼させた戦慄ホラ-が映画化」
と、たいそうな惹句が打たれている。
その割には、恐ろしさも怖さも、たいしてない。
いろいろと工夫はされているものの、
どれもこれも空振りのように感じる。
映像化したところで情念や狂いは、
この小説が怖くないように、
結局のところは、いじめの陰湿さを強調し、
被害者の狂気を正当化することしか入り込めない。
呪いを受けた側の狂気も、極限小説の成り立ちと同じで、
目新しくもないので、こけおどしでしかない。

目にしただけで呪われる。

そういうものができるという設定自体はよいが、
筆力が追い付いていないところも残念だ。

駄作と断じざるを得ないということに、
「ゴメンナサイ」

絶叫仮面2011-09-12

吉見知子     幻冬舎    648円(別)

タイトルから子供向けホラーかと錯覚してしまったが、
実際には普通のミステリだった。
肩透かしを食らったわけだが、思っていた以上に楽しめた。
子供向け作品の質は大層高くなっている。
ただ、細部に何やらごまかしのにおいが残っているから、
もしも大人が読むなら、重箱の隅を突くような読み方はやめよう。
本作品はネット上でも展開されており、
本書に隠されているキーワードを打つことで訪れることができる。

夕暮れの6時40分に絶叫をあげる黒い影。
その声を聞いたものは3日後に死ぬ。
その都市伝説でサイトを運営している神山沙月が語り部となる。

作中に登場するものは少ない。
沙月と、その妹の未琴、kaeと名乗る少年。
それから沙月の同級生で自死した少女の友人でもある一加。

都市伝説は、一年前に倉木サナが死んだ事件後に現れた。
沙月は、その都市伝説に興味を持って、
現実から逃げるように、HNのあやめでサイトを運営していた。
そこにkaeと名乗る訪問者が現れ、
絶叫仮面の声を聞かせてあげるという。
沙月は作り話と思いながら、やや恐れを抱きながら、
Kaeと接触する。
録音されていた声は異様なものだった。
またKaeが見せた写真にはあり得ないものが写っていた。
絶叫仮面は本当にいるのか。

物語は絶叫仮面が実在しているかのようにして進む。

ちょっと不整合なところはあるのだが、
それなりには面白し。

ネタバレさせるのはよくないけれど、
結局はkaeの精神のアンバランスが生み出した、
サイコスリラーという位置づけになるのだろう。
Kaeがサナの弟と一加からの話で分かったところで、
後の展開の予測がつく。

導入部で知らされていた沙月の過去が、
ラストで生きているところはよく考えられている。

サッカーボーイズ14歳 蝉時雨のグラウンド2011-09-13

はらだみずき    角川文庫    590円(別)

サッカーボーイズ ―再会のグラウンド
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2009/08/08/4487988
サッカーボーイズ13歳 雨上がりのグラウンド  はらだみずき
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2011/07/19/5962827
に続く第3作。

すでに次作「15歳 約束のグラウンド」も
この夏に単行本化されている。とても優れたサッカー小説。
少年たちのサッカーに対する思い、
うまくなりたい、勝ちたいという気持ちもよく伝わってくる。
一人一人の成長の過程も楽しみな作品となっている。

子供の本にとどまっていては惜しい。

本作での読みどころは、
野球部に入部した元キーパーのオッサが、
サッカーでし残したことがあると入部したものの、
意欲の割には集中力に欠き、
試合で致命的なミスを犯し負けてしまう。
そのオッサの悩みをめぐる仲間たちのあり方にある。

時に残酷な子供社会での仲間のありようが、
ちゃんとした道筋さえつけられたなら、
うまく収まることがある。
本作でも、野球部とサッカー部のリーダーたちが仲立ちをすることで、
余計な大人の鑑賞が最低限に抑えられた結果、
心の傷を最小に抑えた形で収束させている。
このあたりはよくできている。
著者自身の、今の世のありように対する皮肉とも受けとれる。

1964年生まれのおっさんなのに、子供の目線で書けてける。
自身も現役草フットポーラーということなので、
子どもとサッカーを通した交流から描けているのだろうか。

サニーサイドエッグ2011-09-14

荻原浩    創元推理文庫   860円(別)

ハードボイルド・エッグ  
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2010/09/14/5347064
の続編にあたる。

マーローにあこがれ探偵業を始めた最上俊平。
前作より腕は確実に上がっている。
相変わらず本人はマーローのような探偵であろうとするが、
いかんせんペット捜索が主であり、
およそマーローのような女性とのロマンスのかけらもない。
およそ憧れている探偵像とはかけ離れた毎日を送っているが、
へらず口だけはマーローのようだ。

そんなしがない探偵である俊平が新たに受けた依頼は猫探し。
着物姿のきれいな女性からの依頼だ。
張り切る俊平。
が、同時にやくざからも猫探しの依頼が。
やくざからの依頼には、丁重な断りを入れようとするも、
ちょっと脅され断れずに依頼を受ける。
はてさて、どちらの猫もロシアンブルー。
偶然なのか。

結論を言うと偶然ではなく、同じ猫の捜索依頼であり、
その理由も、一方は猫への愛着であり、
一方は金銭の隠し場所について書かれている。
また女性とやくざも繋がっている。
ましてや女性には男までいて脈なし。
見つけた猫をどうする俊平。
やくざに渡せば破格の報酬。
女性に渡せばわが身も危ない。

マーロウのようにはタフではないけれど、
結果としては、マーロウ張りにかっこよく決める。
だけど傍目では滑稽でしかない。

前作では秘書役に老婆があたったが、
今回は文字通りナイスバディな若い美女が助手となる。
ロマンスになってもよさそうなものだが、
いかんせんかなりわけありな助手なのだ。
このあたりのコミカルさもよい。

随所でマーロウのようにキメようとする俊平だが、
顰蹙の中に身を置くところも変わりない。
なりたい自分にはなれないのは普遍だが、
俊平の場合、ちょっと態度を改めたなら、
めっちゃかっこいいと自分で気づけていない。
俊平を主人公にした続作が出ないかと期待する。

しかしなあ、マーロウを気取りながら『ヘルプにゃ~』
想像しただけで笑えてしまう。

シャンプーを買う。2011-09-14

使っていたプロポリスシャンプーが空になった。

あっと、自分のじゃないよ。犬たちのね。
大体自分のシャンプーなどスーパーで買う一本3-400円のものだ。
一本で2000円もする高級品など、自分に使ったことないのだ。

愚痴は置いといて。

犬の被毛は存外にいたみやすい。
また化学物質アレルギーも起こしやすい。
なんせやつらは全身毛だらけなのだ。
自分で洗い流すわけじゃなく、
飼い主が洗いから濯ぎまでしないといけない。
界面活性剤のたっぷり入ったシャンプーで
中途半端なことをしてしまうと、
犬たちは「開会会」とバリバリと後ろ足でかきむしり、
禿げてみっともないことになるは、
爪でひっかいて皮膚を傷める。
さらには、そっから雑菌が入って皮膚炎にまで至りかねない。
シャンプー選びは慎重に、だ。

「ごお」の存命中は、すべてに完全な奴だったが、
耳と皮膚が弱く、しょっちゅう病院通いをしていた。
アレルギーもちだったのだ。
で、ホームセンターなんかで売っている普通のシャンプーを使うと、
前述のような騒動となっていた。
獣医からは皮膚を正常に保つため洗いなさい。
でも低刺激なものを使いすぐに乾かしなさいと指示された。
で、存命中はずっとノルバサンシャンプーをガロン買いしていた。
ボスも同様の傾向だったのでわけわけして使ってたのだ。

「そらん」にはノルバサンが何となく合わない。
やけにパサつくのだ。
で、「そらん」はヒルトンハーブのオーシャングリーンシャンプーを使っていた。
30倍希釈で使うシャンプーなので泡切れもよい。
「そらん」にはあっていた。
価格は4000円ほどするが、希釈して使うから、
お買い得品だったのだ。
ところが、「はいら」に使うようになると何となく合わない。
で、あれやこれやを試していた。
2頭にあうものを探すも、これだとは決めかねていた。

で、はいらが犬助けした時、
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2010/03/13/4945432
固辞していたけれど、お礼をに頂いたのが、
プロポリスシャンプーなのだ。

これが実によい。
香りがいい。
なによりぱさぱさした感じの「はいら」のさわり心地もよくなる。
コンディショナーも使えば、ぬいぐるみより気持ち良い。
「そらん」にも悪影響は出ない。
それ以来、このシャンプーを中心に使い、3本めを使いきった。

2リッターくらいのものがあればと探したけれど、
業務用ボトルは5リットルのものしかなさそうだ。
使用量から言えば5リットルのものともなれば、
ほぼ毎週洗っているとはいえ、
一回で80ミリリットル程度としか使わないから、
15か月もあることになる。
変質しても嫌だから、業務用ボトルの購入は見送っていた。

今回も500ミリリットルのものを買おうと
ペテックを覗きに行ったら、
なんと限定で安売りしているではないか。
セットで買えば25000円になるその商品が15000円で売られている。
で、買い得じゃと業務用を買うことに決めた。

でも犬たちだけでは多すぎるような気がする。
うーん。どうすべえ。




僕の使っているヘアブラシはドギーマンのものである。
コームも実はペット用のものを使っているのだ。
人用のものより使い勝手が良いくらいなのを知っている。
シャンプーとコンディショナーも
犬のもののほうが良いくらいだ。
で、あればシャンプーとリンスも
犬のものを人に流用したっていいではないか。

と、いうわけで今使っているシャンプーが切れたら
僕も犬たちと同じシャンプーを使うのだ。
使用したら感想は、たぶん書くことになると思う。

靖国への帰還2011-09-15

内田康夫    講談社    648円(別)

名探偵・浅見光彦を主人公としたミステリで。
西村京太郎、山村美佐らを襲ぐ人気作家となった内田康夫。
エンターテイメント作家としての内田作品としてはやや異質。
勇気を持って踏み込んだ一冊と言えるのかもしれない。

靖国神社を題材に取り入れれば、意図にかかわらず必ず賛否が問われる。
中立で居続けるのも難しい。
政府中枢の参拝が正しいと書いても、正しくないと書いても、
どちらに偏っても反発は必至である。
物議を醸しだしたりするようなものにしてしまうような
下手をすると人気に陰りを生じさせかねない。
靖国に踏み込むのは勇気がいる。
靖国問題は政治的に利用されやすい。
内田氏は、この微妙な問題を、
エンターテイメント作品にとどめ置くことに成功している。

あの戦争で傷ついた国民一人一人の心情にまで配慮されている。
と、同時に生贄にされたものも炙り出せている。
ただ、あの戦争を起こしたのは日本人の総意だったのには同意だが、
そこに至るまでの政治的指導者たちの、
国民誘導の責任は不問にした点が惜しいと思う。
現代になお残る紛争の種は、
政治が全国民の意識を誘導するか、
弾圧によって異見を排除するから起きている。
僕はそう思っている。
あの戦争の起きた要因は、当然のように複雑である。
大東亜共栄圏なども発想そのものはいいところもあったろう。
そこにある純粋な理想と現実のギャップまでを
一つの作品に封じ込めエンターテイメントとするのは
やはり相当に困難な作業となるのだろう。

志願兵として国防を志し、戦闘で負傷した兵がタイムスリップしてきて、
靖国に祀られることの意識を訴える。
その部分には共感できるところが多い。
が、背景には靖国に祀られることのない戦争犠牲者も多い。
戦闘員ではないものの哀しみは、軍人から語らせることができなかった点が、
ちょっぴり残念だ。

あの戦争は、その後の決着のつけ方といい、
理不尽なところがたくさん残っている。
その意味では、この作品はやや消化不良なところを残す。
単なる娯楽に終わらず考えさせられる作品となっている点で、
良い作品だとは思う。

「妖怪アパートの幽雅な日常 6」2011-09-16

香月日輪   講談社   495円(税別)

単行本では10巻まで出ているので、
文庫版も折り返し点を過ぎたところ。

妖怪アパートの面々は、いつもに増してにぎやかに宴会してます。
やたらと宴会好きなのが妖怪アパートの人間たちのようです。
とにかく何でも肴にしてしまう。
まっ、本筋とは無関係ですが。

さて夕士も高校2年生となり、学校では本人も知らず農地の青春を謳歌している。
アパートでは、秋音と霊力トレーニングに明け暮れ、
ヒーラーとしての修業も順調。
魔道書プチの扱いにも熟練を感じさせてきている。

高校2年生と言えば、なんといっても修学旅行だ。
なんで学を修める旅が、
学業半ばでなされなければならないかは、考えてはいけない。
世の中はそんなものなのだ。
前作で登場した千晶先生、姦し3人娘やクラスメイトとの旅を楽しめばいい。
雪山でスキー。いいじゃないか。
たとえ学校側の管理目的であったとしても、
単なる物見遊山的バス移動旅行よりはいい。

和気あいあいとした楽しい修学旅行ではあるが、
無事にすまないのが夕士の宿命。
当初宿泊予定だった宿舎が事故で使えないことになり、
代わりに格上ホテルへの宿泊が決まっていた。
喜ぶ高校生たち。そりゃそうだ。普通より設備がいいのだから。
が、おいしい話にはご用心。
出るのだ。何が?そりゃあ決まっている。
地縛霊だ。
やはり前作に登場した美人英語教師青木の、
その信奉者の中ではぶられている女生徒が憑依されてしまう。
信頼していた教師に裏切られ自死した女生徒の怨念が、
千晶へと襲い掛かる。
体調を崩した千晶を必死で守る夕士。
前作でもヒーラーとなった夕士は、またまたヒーラー役になる。

さてさて夕士はこの難問をどう解決するのでしょう。

天を衝く 全3巻2011-09-20

高橋克彦    講談社    ①②733円 ③695円 (税別) 

副題に「秀吉に喧嘩を売った男九戸政実」とある通り、
秀吉による天下統一がなされた後、
東北の片隅で秀吉の仕置きに逆らった九戸政実を描いた力作。

九戸政実は南部氏の枝に連なるとされている。
南部宗家と同格だということも言われている。
政実が生きた時代は、戦国の世が収束に向かう過程であり、
南部氏は、いうまでもなく奥州の大名である。
南部鉄器などにも名を残す。盛岡から青森が本領となる。

政実は武略に秀でていたようで、
戦国末期での南部の隆盛は政実によるところが大きい。
南部晴政の元では、南部の柱石であったといえる。
後の南部藩の初代藩主信直との確執は、
晴政存命のころからあったようで、
晴政の死後、葬儀の席で晴継が暗殺されたことで、
信直が後継となったことで緊張が高まり、
秀吉の奥州仕置き後、内乱となる。
結局は秀吉に政実は敗れ、九戸氏は滅亡する。

政実を時代を読めなかった凡将とするきらいもあるが、
高橋氏は信長に匹敵する果敢さや政略・武略を持つ部場将して描いている。
作中で何度も一族の構成からくる意思決定の後進性、
棟梁の優柔不断さ、辺境にある位置上の不利などを嘆かせている。

高橋作品は、「炎たつ」や「火怨」などで、
畿内を中心とした歴史のありようを地方からの視点で描いている。
本作品も、その系譜のものと言ってよいだろう。
敗者の歴史は勝者によって塗り替えられている。
その視点から描かれた政実の姿は、
まさに阿弖流為に匹敵する英雄となる。

すばらしい。