絶叫仮面2011-09-12

吉見知子     幻冬舎    648円(別)

タイトルから子供向けホラーかと錯覚してしまったが、
実際には普通のミステリだった。
肩透かしを食らったわけだが、思っていた以上に楽しめた。
子供向け作品の質は大層高くなっている。
ただ、細部に何やらごまかしのにおいが残っているから、
もしも大人が読むなら、重箱の隅を突くような読み方はやめよう。
本作品はネット上でも展開されており、
本書に隠されているキーワードを打つことで訪れることができる。

夕暮れの6時40分に絶叫をあげる黒い影。
その声を聞いたものは3日後に死ぬ。
その都市伝説でサイトを運営している神山沙月が語り部となる。

作中に登場するものは少ない。
沙月と、その妹の未琴、kaeと名乗る少年。
それから沙月の同級生で自死した少女の友人でもある一加。

都市伝説は、一年前に倉木サナが死んだ事件後に現れた。
沙月は、その都市伝説に興味を持って、
現実から逃げるように、HNのあやめでサイトを運営していた。
そこにkaeと名乗る訪問者が現れ、
絶叫仮面の声を聞かせてあげるという。
沙月は作り話と思いながら、やや恐れを抱きながら、
Kaeと接触する。
録音されていた声は異様なものだった。
またKaeが見せた写真にはあり得ないものが写っていた。
絶叫仮面は本当にいるのか。

物語は絶叫仮面が実在しているかのようにして進む。

ちょっと不整合なところはあるのだが、
それなりには面白し。

ネタバレさせるのはよくないけれど、
結局はkaeの精神のアンバランスが生み出した、
サイコスリラーという位置づけになるのだろう。
Kaeがサナの弟と一加からの話で分かったところで、
後の展開の予測がつく。

導入部で知らされていた沙月の過去が、
ラストで生きているところはよく考えられている。