さくら2005-09-13

小学館から出版の「西加奈子」さんの第2作。
さる女性に二度薦められて読む気になった。
僕が「犬」をキーワードにした作品を読んでいるから、と
薦められたのだ。
読んだ感想。「さくら」は可愛いけれど、
さすが著者も犬が好きだなあと関心はしたけれど、
犬好きの僕の心には響かなかった。
ただ、泣き虫の僕にはずしんと来た。

帯には「ただの感動じゃないらしい」
難しいなあ。ただの感動ではないけれど、
なんだか反発するところがあったりするし。。。

こんな家族実在したら怖いよお。

が、反発の主原因。

とはいえ、多くの人に支持されるのに納得。

物語は長谷川家の次男坊『薫」の現在からスタートする。
広告のウラに記された「父」からの手紙。
なんということもない文面を見るうち、
飼い犬の『さくら』に会おうと思い立つところからスタートする。

『さくら』に会いに実家に戻り、
家族と再会し、20歳で亡くなった『兄』の話が提示された後、
『薫』の回想が始まる。

その『回想』のなかで5人家族のまっすぐに、まっすぐな日々が語られる。
そして、一頭の雌犬『さくら』が家族のまっすぐな愛を象徴する。
回想のなかの家族はどこまでもまっすぐなのに
始まりの再会すろ家族は裏腹にぎこちない。
なぜ家族がぎこちなくなってしまったのかは
『回想』が進むにつれて全貌を現す。

太陽のような『兄』の不存在が、
怜悧で暴力的なまでに美しい長女の思いが、
ふわふわとして真っ正直な母の愛が
『薫』のどこか厭世的な思いが、
『父』の驚異的な献身が、
家族がばらばらになりながらも、
根底では響きあい続け
最後の最後に『さくら』の体調の悪化で
爆発し、再生にいたるまでの経過は
感動できたとしたら、これまでの感動とは別の『何か』と思うに違いない。

作中では、二人の性同一性障害の人物が設定されている。
彼らとの関係を、ごく自然に普通の人間関係と捉える家族たちが、
最後に発する言葉の群れにはこころが啓かされる。

あまりにも美しすぎる家族ゆえに反発を覚えているのだが、
それはひねくれてしまった僕のこと。
間違いなく感動できるだろう。

7点

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://kumaneko.asablo.jp/blog/2005/09/13/73155/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。