あの星への切符2006-09-10

シルヴィア・ウォー  ランダムハウス講談社  760円

「さよなら、星のむこうへ」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2006/08/16/486571
に続く、オーミンガットシリーズ第2部。

前作の物語の中心トーマスは、オーミンガットの生まれたと知っていたが、
本作の主人公・ネスタはオーミンガットの話は御伽噺として認知している。
それが突然、トーマスの事件の余波で星への帰還が早められ、
御伽噺だと思っていたものが、真実だったと知らされる。
自分は地球で生まれ、地球で育つと信じて疑っていない少女である。
両親ほどには望郷は無い。むしろ自分の生きてきた歴史を守りたい。
その生まれの差が、星への帰還を前にしたとき、
トーマスとは違うネスタとしての独自の行動を選び取らせる。
主人公二人の設定の差が、トーマスの章では、
どちらかというと静かな物語となっていたのに比し、
心の動きも、行動の積極性においても、
ネスタの物語は、はるかにダイナミックとの印象を与える。

ネスタたち家族に与えられた試練は、
オーミンガットへの帰還葉4日後までに準備が必要。
ネスタは地球に両親とともに残りたい。
両親は娘とともにオーミンガットに戻りたい。
父親にとっては娘もオーミンガットも捨てられない。

両親に「私は行かない」と宣言したネスタは、
親友の助けを借り家出を決行する。
タイムリミットまで家出を続けることで両親とともに地球に残ろうというのだ。
きっと両親はネスタを見捨てない。
その思いを抱きつつも不安な4日間を迎える。
果たして両親とネスタの運命は…

前作に登場したトーマスの親友ミッキー、隣人のステラも登場し、
かなり重要な役割を果たします。

人との約束の大切さ、他人の秘密を容易に明かさないこと、
行動することの大切さなど大切なものが溢れている作品です。
なにより、親子とは何かということを考えさせる物語になっています。