兎 -うさぎー2006-09-27

高口里純  講談社漫画文庫  456円(絶版?)

1957年生まれ。1979年に22歳でプロデビューした高口里純。
少女マンガかとして出発したが、丁度このころ専属契約がきれたようで、
少女マンガ以外にも活躍の場を広げつつあったようだ。
1987年から代表作「花のあすか組」を連載し始めており、
以後今日まで常に第一線で活躍する作家である。

「兎」は月刊アフタヌーン」で連載されており、青年誌よりと見てよいが、
漫画文庫版でのあとがきで著者自身は「少女マンガ」よりだと思うとしている。
この作品については、同じあとがきで「もう少し続けてもよい。」としているが、
同時に「今思うと、これはこれでいいや」としています。
まさに高口さんの感想どおりの出来ぐあいとなっています。

会田兎は極道を嫌う母に育てられた私生児。
やんちゃもしているが、一匹狼で群れることをしない男。
それなりに生きて楽しんでいてラビットと呼ばれている。、
はぐれものだが真っ直ぐな日常を過ごしていた。
だが実の父親は広域暴力団の組長であり、
その父が死に際し、よりによって兎を跡目に指名する。
跡目は異母テ兄も狙っており、本人が知らないうちに跡目抗争に巻き込まれることとなる。
巨大な暴力組織を動かす兄に対し、兎は徒手空拳に等しい。
ひっぱいの運命に落ちた兎は、運命に逆らい、生き残るために闘う。

壮大な構想なのだが、なぜか闘争は中途半端な形で決着させてしまっている。
この辺りが著者の感想に現れている。
しかし、ここまでの力の開きがある以上、短期決戦で終わらせたことは、
むしろすっきりとさせていることにも気づく。
高口氏の後の作品世界の源流ともなる要素が詰まった佳品。