捨て犬トッティ 下 ― 2007-01-27
上巻がぽんこつ山を舞台にした捨て犬たちの様子から、
台風で壊滅したぽんこつ山から逃げ出し、町へと出、
河原で野良猫らんぷたちと交流したくましく生きていく過程を描いていた。
下巻は、悪徳ペット業者に虐待されているプードルの元を訪ねたトッティが、
町の野良犬ウーハンに囲まれ危機一髪になったところから開始される。
このあたりの挿話は、ちょっとありえない気もするのだが、
まあ、教訓を含んだ話にはよくあることなので、
気にしないで読み進めていった。
この物語は動物を擬人化し、動物の種を超えた交流が可能としている点で、
大きな違和感を感じるところがあるのだが、
前にも書いたように、子どもの物語としてなら成功していると思う。
主人公を捨て犬のトッティにし、トッティの一人称小説にしているため、
登場する人間が人としての奥行きをもてないのが残念だ。
ぽんこつ山の元熟練工ヤスダは、そんな中で唯一人としての魅力を出している。
しかし、その他の人間はトッティから見た姿だけしか見えず、
悪人はどこまでも悪人で、善人は限りなく善人とされてしまい、
他の動物たちのような語り口にされていない。これは残念な点である。
上巻から登場するウーハンや権兵衛は、最初敵役に過ぎなかったのに、
物語が進むうち善性を持つものとして描かれていくのたが、
人間には、そういう語り口はなされていない。
人間の善性や悪性もまたウーハンたちと変わらぬ所があると僕は信じているので、作者がこのわうな平板な悪人を描ききったところは、
取捨選択の過程でとったことだろうとは思うが、残念だ。
この世はもっとどろどろとしているのに。
そういう意味でも単純化された価値観の植え付けが、
子供向けなら、と捉える原因となっている。
意味もなく生き物を射殺すような事件や、
飼っておきながら無関心に徹するペット虐待の現実、
保護・愛護を主張する偽善のありよう、
そうした日本のペット事情の暗部を題材とした大作であり、
非常に考えさせる事柄がてんこ盛りとなっている小説である。
特に意図してか意図せずになのかは不明だが、
犬と猫と狸・豚・アヒルなどが共同生活する辺り、
互いを尊重する態度の大切さを強調する教訓話となっている。
そういうことを忘れきった大人にも、
存外この小説は読ませるべきものなのかもしれない。
結末のつけ方は、トッティたちの一生が無意味になりかけ残酷だが、
上巻でも見られたようなファンタジーの手法によって、
後味の悪いものとして終わらないよう配慮されている。
台風で壊滅したぽんこつ山から逃げ出し、町へと出、
河原で野良猫らんぷたちと交流したくましく生きていく過程を描いていた。
下巻は、悪徳ペット業者に虐待されているプードルの元を訪ねたトッティが、
町の野良犬ウーハンに囲まれ危機一髪になったところから開始される。
このあたりの挿話は、ちょっとありえない気もするのだが、
まあ、教訓を含んだ話にはよくあることなので、
気にしないで読み進めていった。
この物語は動物を擬人化し、動物の種を超えた交流が可能としている点で、
大きな違和感を感じるところがあるのだが、
前にも書いたように、子どもの物語としてなら成功していると思う。
主人公を捨て犬のトッティにし、トッティの一人称小説にしているため、
登場する人間が人としての奥行きをもてないのが残念だ。
ぽんこつ山の元熟練工ヤスダは、そんな中で唯一人としての魅力を出している。
しかし、その他の人間はトッティから見た姿だけしか見えず、
悪人はどこまでも悪人で、善人は限りなく善人とされてしまい、
他の動物たちのような語り口にされていない。これは残念な点である。
上巻から登場するウーハンや権兵衛は、最初敵役に過ぎなかったのに、
物語が進むうち善性を持つものとして描かれていくのたが、
人間には、そういう語り口はなされていない。
人間の善性や悪性もまたウーハンたちと変わらぬ所があると僕は信じているので、作者がこのわうな平板な悪人を描ききったところは、
取捨選択の過程でとったことだろうとは思うが、残念だ。
この世はもっとどろどろとしているのに。
そういう意味でも単純化された価値観の植え付けが、
子供向けなら、と捉える原因となっている。
意味もなく生き物を射殺すような事件や、
飼っておきながら無関心に徹するペット虐待の現実、
保護・愛護を主張する偽善のありよう、
そうした日本のペット事情の暗部を題材とした大作であり、
非常に考えさせる事柄がてんこ盛りとなっている小説である。
特に意図してか意図せずになのかは不明だが、
犬と猫と狸・豚・アヒルなどが共同生活する辺り、
互いを尊重する態度の大切さを強調する教訓話となっている。
そういうことを忘れきった大人にも、
存外この小説は読ませるべきものなのかもしれない。
結末のつけ方は、トッティたちの一生が無意味になりかけ残酷だが、
上巻でも見られたようなファンタジーの手法によって、
後味の悪いものとして終わらないよう配慮されている。
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