あの子からのグッドバイ2007-01-06

川木淳   幻冬舎文庫   495円

幻冬舎は犬の文庫本を結構出版している。
「ダメ犬グー」「ディロン」もワンコ文庫としてラインアップされている。
世がペットブームゆえか、各社ペットものに力を入れている昨今といえよう。

この本は、川木さんが編著者となり都合24人、
25ワンと飼主の結びつきが語られている。
あの世から飼主たちへの犬たちからの手紙として描かれる短い文は、
飼主たちの悔いや遣り残した思いなどを抱合していて、
深い愛惜を感じさせる。
と、同時に生前の犬たちとの記憶が、読むものに沸き立ち様な喜びを伝えもする。

登場する犬は天寿を全うしたものもいれば、病に倒れ早逝したものもいる。
いずれにしろ愛犬を失った飼い主たちの心に、
隙間風を吹かせたであろう事は容易に想像できる。
ここに載せられた犬たちからの手紙という体裁で語られるまでには、
本当に悔いが身も心もへしゃげさせていたのではないかと推察させられる。

愛犬家らの手紙という形で、心残りを整理していく飼主たちの心の軌跡は、
愛犬を失ったものなら誰もが感じているものである。
それだけに読後には胃の腑に重いものを残されているように思えた。

こうした手紙に擬した愛惜表現は、
飼主たちの自己満足でしかないということもできるが、
真っ向からくだらないと捨て去ることはできない。

僕だって「ごお」からの手紙という形で書けるものなら書き、
後ろめたさなり後悔なりを打ち消すことができるのなら、
これらの著者と同じように整理をしていきたいと思っている。
だが、僕の場合は「ごお」に対して許せない裏切りをしている気がするため、
永遠にこういう手紙を書くことはできない。悲しいことだが。

簡単に犬を飼い、気に入らぬからと手放し、処分していしまうやから、
命を軽視しているみっともないものどもが、
こうした著者たちの苦悩をどう受け取るのか問いかけたい気がする。
彼らはこの著者たちの思いを欺瞞と断じはしないだろうか。
もしそうなら、この先生きている限り悲惨な事件は増加するのみなのだろう。

天国から届いた愛犬からのメッセージ集と銘打つ本書であるが、
買うには及ばない。
むしろ一人ひとりの飼主の裡に、犬への思いを沁みこませる事こそが、
本書が伝えるメッセージに他ならないのだ。