パーク・ライフ2007-01-09

吉田修一  文春文庫   390円

2002年に芥川賞受賞作となった「パーク・ライフ」と
「flowers」という作品が収められた一冊である。
いづれも100ページを超さない中篇であるが、
内容はたっぷりとある好篇となっている。

どちらも心が揺らぎの中にいる者たちを描いている。 
「パーク・ライフ」は、一人の男性の視点で書かれている。
同僚がいるつもりでドナー登録募集の広告を見た感想を言い、
同僚がいなくなっていて気まずさを覚えていたところを、
見知らぬ女性の一言で救われるところから始まる。
その女性は同じ公園で休憩を取っているため、
偶然に見かけて追いかけるのである。
彼女は公園をよく眺めているようで、彼の奇妙な習慣を熟知していた。
彼女は彼と、ほかに一人、公園でヘリコプターを飛ばす男を飽きもせず観察していたという。
こうして出会った二人が突き抜けた出会いを繰り返している一方で、
彼の周りでは小さな出来事が起きていく。
初恋の女性が結婚をする。
世話になった知人夫婦は愛し合っていたはずなのに離婚の危機にある。
その他もろもろの事情に、彼は気遣いながら生きている。
彼女との恋が始まりそうで始まらず、
ただ公園で声をかけあうだけだったのが、
少しずつ距離が近づいていく。
見る風景がちょっとずつ変わっていく、恋愛小説とも読める。
彼が見る彼女はちょっと風変わりだけれども、
とても素敵に描かれている。
物語はいつもの公園の傍で開催されている写真展を、
いつものように昼休みに会い出かけていく場面で終わりを迎えるる
最後に「…私ね、決めた」と言い去っていく彼女との間に大きく育つ愛があったのか、
続編があれば知りたい気がする。

「flowers 」は結婚を期に九州から東京に出てきた男の視点で描かれている。
東京での暮らしを始めたとき、望月元旦という男と出会い、
彼の破天荒ぶりに振り回されながらも、そのへんな魅力に惹かれる。
元旦は上司の妻と不倫しながら、その妻を社長にあてがい、
同時に上司とも屈託なく飲みに行ける無軌道なところがある。
元旦はテレビに出たことがあるが、
そのとき一緒だった妻からは愛想をつかされ、独り者になっている。
彼の自慢は巨大な一物で、元妻も上司の妻も彼と一緒にいるのは、
その事実によるところが大きいと言ったところか。
東京に出てきた男は、月に一度の贅沢で一流ホテルに泊まる以外、
さしたる遊びをするわけでもなく、堅実な人生を目指そうとしているが、
妻は舞台女優に憧れ、次第に微妙な立場になっていくし、
職場では元旦に巻き込まれて、見なくていい人間関係を知り動揺もしている。
社長と、それとも知らずに妻を寝取られている上司は幼馴染であり、
社長は上司を奴隷のごとく扱い、怒鳴り散らしている。
人を人とも思わぬ社長の態度に、社員一同嫌気がさしているが、
当の上司が唯々諾々と叱責を受け入れ、甘んじている。
ある暑い日、いつもの社長の剣幕に意を決して逆らう上司がいた。
そのとき、日ごろ上司のふがいなさを嘲笑っていた元旦がとる行動に、
社員たちの不快さが頂点に達し、暴発する。

二つの作品とも、ちょっとした不安感が、不安定さが現実にあるところを、
著者の筆は巧妙に捉え物語にさせている。さすがである。

そらんの2007年初訓練2007-01-09

今日は「そらん」の今年最初の訓練だった。
朝、お迎えが来たとき寝ていたので、
「そらん」の勇んで出かけるさまは見ていない。
お迎えが来た瞬間、表に飛び出し一目散に車に乗り込んで出かけたと聞かされた。
ほんまに訓練の日が待ち遠しくて仕方ないらしい。
今日は勤務の都合上、僕は訓練に参加できなかった。
明日続けて訓練に出かけるらしい。
明日こそは付き合いにいってやらねばなるまい。

僕がしっかりしないと、捜索試験に受かりそうにはないのだ。
せっかくやから、賢い犬ですねと、呼ばれるようにしてやらんとなとは思っている。
ただ、実力がまったく伴わないだめ飼主なので…
すまんな「そらん」。