読み替えられた日本神話2008-04-08

斉藤英喜   講談社現代新書   720円

日本神話というと「古事記」と「日本書紀」と思い勝ちである。
が、両者とも編纂過程で原型に手が加えられたと推定され、
本来のダイナミズムが失われたと考えられる。
その上、時代と共に解釈が変化していき、
幕末から明治、大正、昭和と国体維持のため、
単一な世界観を形成させてきた。

太平洋戦争敗戦の結果、
記紀は、国家神道という枠組みに解釈され変容していたため、
いったんは資料的価値のないものとして、
神話・伝説の類と、含まれていた歴史的側面すら無視され、
価値のないものとして扱われた時期さえあった。
行き過ぎた批判は、その後多くの研究者によって是正され、
また昭和50年代以降の考古学的成果から、
再び資料的価値が認められるようになり、現在に至る。

しかしながら、明治期以降の戦争に突き進む時代の中、
国家神道としての解釈がなされたことからくる、
戦争の正当性を主張することに利用されたとの批判は生き残り、
毛嫌いする向きもある。
まことに記紀とは厄介な立場に追いやられてしまっているといえよう。

そこで本書の登場となる。
著者は佛教大学教授であり、神話研究者である。
国文学や歴史といった近接領域をも研究していて、
新たな研究テーマを追い求めているとのことだ。

日本の神話を記紀の呪縛、
近・現代日本で狭められた観念から解き放ち、
根源的な魅力を掘り起こそうとしている。

こうして書籍として提示されれば、
記紀の背景にある日本神話の豪快さは驚嘆に値する。
アマテラスの変容など、こんなに面白い日本神話はない。

記紀や、それ以外に伝承されている資料を駆使し、
現代の宮崎アニメに至るまでを解釈して言っているが、
この面白さは、是非に味わってみるべきと思う。

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