パレード2008-04-07

吉田修一   幻冬舎文庫   533円

「パーク・ライフ」で2002年度芥川賞を受賞した吉田修一の作品。
『パレード』のほうも山本周五郎賞を受賞している。
純文学としての『パーク・ライフ』と、
大衆小説としての『パレード』といった見方もされるようだが、
僕の読後感では両者に差はない。

むしろ人間の心理描写の奥深さから言えば、
『パレード』のほうが、恐ろしくて緻密なように思える。
どこら辺に線引きをする考え方があるのか疑問だ。
そもそも読み手にとっては、面白ければいい、のである。

読後感が爽やかな『パーク・ライフ』、不気味な『パレード』、
僕にはその程度の差でしか受け止められない。

『パレード』の不気味さは、
都内でルーム・シェアしている4人の若者。
そこへさらに一人加わり5人となる。
それぞれが問題を抱え込みながらも、
共同生活は順調に進んでいる。
…かのように思えた。

5人の、それぞれの視点で、物語が語られていくうち、
次第にある事件が絡みだす。
彼らのマンション周辺で女性が殴打されるのだ。
絡み合った糸は、語り継がれるうちに微妙に予兆を示し始める。
登場人物のうち、もっとも透明な存在だった、
一同の主柱であった男の狂いが貌を見せだす。

事件への男の関与が破断点を迎えたとき、
残る4人がとる行動、それが男を絡め取る。
恐ろしい小説だ。

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