『パイの物語』 ― 2007-06-09
ヤン・マーテル著 竹書房 2004刊 ¥1800
最近の海外文学では『ハリー・ポッター』ばかりが注目されているようですが、
ほかにも秀作はたくさんあります。
ルグインの『空飛び猫』シリーズや
ダレンシャンなども優れた物語ではないかと思っています。
そんな優れた作品のひとつに『パイの物語』も並べてよいと思います。
この作品は海洋漂流物語で
『ロビンソン・クルーソー』などと同じ範疇に属していますが、
いっそうひねりの効いたところもあり、
従来にない新しい味が感じられます。
2002年度の英国ブッカー賞を受賞し映画化もされるということです。
物語は3部構成になっています。
主人公パイ・パテル少年のインドでの生活が第一部。
一家がインドに絶望しカナダへの移住途上、
船舶事故により太平洋を漂流する第二部。後日談の第三部。
それぞれのパートに興味深いエピソードがちりばめられていますが、
圧巻は第二部のベンガルトラと太平洋を漂流するパートです。
一艘しかない救命ボートに乗り助かったのはパイ少年と4頭の動物たち、
骨折したシマウマ、オランウータン、ハイエナ、
そしてベンガルトラ。凄絶なサバイバルゲームが始まる。
次第に混濁する記憶が幻想にまでいたらしめる描写には引き込まれます。
第一部でも現代社会の病巣のひとつ、
宗教対立に言及するなど、人間の暗部にも光をあてています。
短い第三部は、
この作品を単純な漂流冒険物語に終わらせない皮肉なパートになっています。
この第三部があるからこそ、第二部の異様な物語が、
何故パイ少年によって語られることとなったかが見えてきます。
予定調和的作品に飽き足りない人必読の書
最近の海外文学では『ハリー・ポッター』ばかりが注目されているようですが、
ほかにも秀作はたくさんあります。
ルグインの『空飛び猫』シリーズや
ダレンシャンなども優れた物語ではないかと思っています。
そんな優れた作品のひとつに『パイの物語』も並べてよいと思います。
この作品は海洋漂流物語で
『ロビンソン・クルーソー』などと同じ範疇に属していますが、
いっそうひねりの効いたところもあり、
従来にない新しい味が感じられます。
2002年度の英国ブッカー賞を受賞し映画化もされるということです。
物語は3部構成になっています。
主人公パイ・パテル少年のインドでの生活が第一部。
一家がインドに絶望しカナダへの移住途上、
船舶事故により太平洋を漂流する第二部。後日談の第三部。
それぞれのパートに興味深いエピソードがちりばめられていますが、
圧巻は第二部のベンガルトラと太平洋を漂流するパートです。
一艘しかない救命ボートに乗り助かったのはパイ少年と4頭の動物たち、
骨折したシマウマ、オランウータン、ハイエナ、
そしてベンガルトラ。凄絶なサバイバルゲームが始まる。
次第に混濁する記憶が幻想にまでいたらしめる描写には引き込まれます。
第一部でも現代社会の病巣のひとつ、
宗教対立に言及するなど、人間の暗部にも光をあてています。
短い第三部は、
この作品を単純な漂流冒険物語に終わらせない皮肉なパートになっています。
この第三部があるからこそ、第二部の異様な物語が、
何故パイ少年によって語られることとなったかが見えてきます。
予定調和的作品に飽き足りない人必読の書
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