忍びの国2011-09-28

和田竜    新潮文庫   552円(別)

「のぼうの城」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2011/01/24/5647969
で、デビューと同時に直木賞候補作家となった和田竜の第2作。
2008年に発刊されている。
「忍びの国」は織田信長の伊賀攻略までをベースにした娯楽小説だ。
コミック誌のゲッサンにて坂ノ睦の画により連載されていた。
コミックと小説で同じ印象をもたらすのは、
著者・和田竜の経歴が影響しているのかもしれない。
どちらかを読めば十分。
それぞれの手法による読後感の差は少ない。

戦国期の伊賀の国は小領主が乱立しており、
国としてのまとまりはなく、互いが争い荒廃していた。
でも、国外からの侵攻があれば、
小領主連合が結束して事に当たる体制ができている。

伊賀は、山間の地であり、独特の技が発達していた。
それらの技は諜報や暗殺などに大きな威力を持つため、
伊賀の技は諸国に高く売れるものとなっていた。

一方で急速に拡大する織田の勢力は、
伊勢、近江などを併呑し膨張し続けている。
しかし、地形的な特徴から侵攻は困難と考え伊賀攻略は慎重に臨んでいた。

その慎重さを怯と見たのか、
百地三太夫を筆頭に、伊賀衆は織田に対して謀略を開始する。
策に乗せられた伊勢は伊賀への侵攻を開始する。
信長という偉大な父を持つ、子の信雄の焦りなどもよく書けている。
北畠旧臣の葛藤などもよく書き込んであり、
天正伊賀の乱というものが、
もしかしたらこの作品のような背景で起きたのかと納得させられてしまう。

「忍びの国」の一番の読みどころは無門という人物造形にある。
安芸の国で口説いたお国に頭が当たらない情けなさを持つが、
伊賀随一の腕を持つ達者で、三太夫からも一目置かれている。
わずかな報酬のため、超絶の技をふるう無門だが、
お国と会って以来暗殺はほとんどしていない。
その無門を中心にして物語は進んでいく。

娯楽小説としては大変良くできた作品であるが、
個人的には、あまりすすめたくない。
面白さという点では手放しにすすめられるものだが、
どこかで拒否がある。

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