信長 あるいは戴冠せるアンドロギュタス2006-08-30

宇月原晴明  新潮文庫  590円

「黎明に叛くもの」を読んだところ、
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2006/08/09/477963
どうも本能寺のところで不完全燃焼に陥ったので、
著者の最初の長編を急遽読んでみることにした。
この作品を読んだら、「黎明に叛くもの」のエンディングの不可解さに、
一定の解決が見出せると思ったのだ。
確かにすっきりしなかったところへの解答はあったのだが、
二つの作品の世界が微妙にずれていて、
隆慶一郎の世界のような統一感がなかったのは残念に思えた。

アントナン・アルトーという実在の人物を配し、
総見寺と言う日本人青年とアルトーの邂逅から物語りは進められる。
オリエントの古代神信仰が東西に分かれて受け継がれ、
ローマ皇帝ヘリオガバルスと信長に結実したというのだ。
ともに陰にして陽、両性具有者であったというのだ。
二人の間の研究が進むうち、ヒトラーが入り込んで゜きたりして、
その展開も興味深いものがあるが、
信長が少女のように美しい両性具有者として捕らえなおされるところは、
従来の信長像に覆し、衝撃を与える。

この信長像で、史実を振り返ったとき、驚愕の闇が暴かれていく。
11回ファンタジーノベル対象を受賞したというのは伊達ではない。

面白さは保障つきであるが、
洋の東西に分布する神話世界を構築しなおす、
著者の用意した壮大な世界観には、ついていくのは難しいかもしれない。

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_ ぱんどら日記 - 2006-09-01 15:21

アンドロギュヌスとは「両性具有」である。

漢字って便利だね。アンドロギュヌスという音だけでは何のことやらわからないが、漢字で書くと、目で見ただけで意味が何となくわかる。

つまりこの小説は、


織田信長が両性