ミカ!2006-09-05

伊藤たかみ  文春文庫  552円

『八月の路上に捨てる』で芥川賞を受賞した伊藤たかみの児童向け小説。
角田光代を妻に持つので、夫婦揃って芥川賞を受賞したということになる。
この「ミカ!」は小学館児童文化出版文化省なるものを受賞しており、
高い評価を受けている。また、その名に恥じない面白さを持っている。

ミカとユウスケは双子の小学生。ミカはおとこまさりで活発。
家庭では両親が別居し、姉は家出。
あっちもこっちも不安定でもろくなっている思春期の女の子だ。
女の子であることを受け入れがたく、膨らみ始めた胸に抵抗を感じている。
そんな微妙で揺れ動く季節を生きている。
そういうミカをユウスケの視点から捉えるのが本書である。

本来、この小説は子どもたちこそ読むべきものなのだろう。
だが、作者が描く子どもたちの世界は、
大人に異性を意識し始めた甘酸っぱい心を思い出させるのだ。
その記憶を思い出すことで、子どもに対して優しい気持ちになれる。

大人も子どもも、それぞれにあった読み方ができる本書は、
魅力的な作品といえる。

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