犯罪小説家2011-10-13

雫井修介    双葉社    714円(別)

雫井 脩介は1968年生まれで、1999年、『栄光一途』で小説家デビューした。
その後彼の作品は年一冊のペースで発表され、
『火の粉』がテレビドラマとなったほか、
『クローズド・ノート』が、漫画化、映画化、『犯人に告ぐ』が映画化されている。

既読の作品としては『火の粉』がある。
一家惨殺事件の容疑者に無罪判決を出した元裁判官の隣家に、
当時の容疑者が引っ越してくる。
男は、あふれる善意で接してくる。
その善意が家庭を侵食していき、やがて崩壊へと向かわせる。
家庭の崩壊は食い止められるのか。
巧みな心理描写が光った怖いサスペンスだった。

大評判をとった『クローズド・ノート』はコミックで読んだ。
まあ、感涙ものの一冊ではあると思うけれど、
コミックからは揺さぶられるほど感銘は受けなかった。
原作を読んだら違うのかも、と思いはしたが、
いまだに手にとってはいない。

いつかはもう一冊と思っていたのである。
それが本作品ということになる。

長い不遇の時代を経験したのち、新人賞を得た小説家・待居涼司。
彼の最新作「凍て鶴」は高評価を得、映画化の話が持ち上がった。
奇才として知られる人気脚本家の小野川充が監督に抜擢される。
小野川は「凍て鶴」の映像化に当たり、
主人公の"美鶴"に肉付きを与えるには、
自殺系サイト「落花の会」主宰の木ノ瀬蓮美が合うと主張する。
映画製作に向けて、小野川はライター今泉に調査を依頼する。
「落花の会」への小野川の異様なまでの執着に戸惑う待居。
一方、調査を重ねるうち今泉は「落花の会」の周りに待居の影を感じる。
その進展具合に待居は不気味さを感じるが、
小野川は待居をいつでも引き込んでくる。

小野川の真意はどこにあるのか。
待居と「落花の会」には接点があるのか。

小野川・町井・今泉の心理描写は緊迫感に満ちている。

作中「凍て鶴」のアイデアだけでも一冊ホンマにかけそう。
ラストの持っていきようも絶妙。
傑作と思います。

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